R. Wayne Stacy, ed.,

A Baptist's Theology,

Macon: Smyth & Helwys, 1999.

 第1回目の文献資料は、標記の A Baptist's Theology です。米国ジョージア州メーコンのスマイス・アンド・ヘルウィス出版から1999年に刊行された書で、南部バプテストの学者らが章ごとに分担して執筆しています。

 留意すべきは、(1)書名の冒頭が "The" ではなく、"A" となっていること、(2)出版元が「スマイス・アンド・ヘルウィス出版」であること、(3)出版年が「1999年」であること、です。そこにはそれぞれ、次のような意味合いがあります。(1)バプテストの歴史においては特定の神学を「唯一絶対」とする伝統はなく、それゆえ、本書の各章は執筆者各人の神学的理解を「一人のそれ、一つのそれ」として著わしたものであること。(2)バプテストの歴史的先駆者とされる「スマイス」と「ヘルウィス」を社名に掲げて立ち上げられた出版社から刊行することで、バプテスト元来の原点に戻ることを 執筆者たちは願っていること。(3)米国南部バプテスト連盟がその信仰宣言を保守化・教条化させて改定する2000年を直前にした1999年に出版することで、改定等に同調しない執筆者らの立場を明らかにしようとしたこと。

 これらをよく表わしているのが、本書執筆陣の顔ぶれです。アメリカの南部バプテスト連盟は、2000年の信仰宣言改定問題を最大の要因として、各種の異論・対立が表面化。これを受け、連盟内の準独立グループとして、「協力バプテストフェローシップ」という組織が立ち上げられました。本書の執筆陣は全員、このグループと関係する学者たちです。その志向するところは、バプテストの歴史的立場を大切にし、これを包摂していたと考えられるそれまでの南部バプテストの良き伝統を尊重することでした。そうしたあり方から、神学的理解においても、教条的でない より本質的で穏健・柔軟なそれが重んじられていると言えるでしょう。

 第1回目の今回は、そのような書を題材にし、バプテストについて考え合えたらと思います。なお、原著は英文ですが、「表紙」と「目次」「執筆者紹介」の各頁を写真で添えておきます。

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 本スタディーグループへの参加者は、この書の中から各自、関心のある章を選んで読んだ後、その内容を書評的にまとめて寄稿することになりました。ただし、単なる報告ではなく、現場たる教会でのあれこれと突き合わせて その内容を吟味・検討することが期待されています。いわゆる「クリティカル・ブックレビュー」と呼ばれるもので、「批評的書評」とでも言えるでしょうか。

 また、これを受けて後日、他の参加者たちの書評を読んだうえで、そのいずれかに感想・質問・意見等の応答を寄せることが予定されています。お楽しみに。

 初回の参加者は、次のとおりです(あいうえお順、敬称略):泉 選也、加山 献(Eschatology)、永松 九実子(Revelation)、永松 博(同前)、三上 充。日々の多忙な牧会のなか、貴重な時間を割いて御寄稿くださったことに感謝いたします。

 なお、下記の掲載は原著の章立て順となっています。

(本ページは、御質問・御感想・御意見・コメント等の受け付けを行なっていません) 

*現在、編集作業継続中です。終了まで、いましばらく お待ちください。




"Revelation" by William L. Hendricks

永松 九実子(ながまつ・くみこ)

*前牧師、多良見キリスト教会、日本バプテスト連盟

永松 博(ながまつ・ひろし)

*前牧師、多良見キリスト教会、日本バプテスト連盟

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%22Revelation%22 by William L. Hendricks
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%22Revelation%22 by William L. Hendricks
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©NAGAMATSU Kumiko, 2019

©NAGAMATSU Hiroshi, 2019

*ブックレビューを読んで:金丸 英子(西南学院大学神学部教員)

 このクリティカル・ブックレビューは、バプテストフォーラムのスタディーグループへ任意で参加表明した投稿者によるものである。第1回目の今回は、7月27日現在で、永松九実子・永松博両牧師が "Revelation" を、加山献牧師が "Eschatology" をそれぞれ読み解き、概要をまとめて書評を寄稿された。一読して明らかなように、両方とも「労作」という言葉がぴったりする。そもそもこのブックレビューには、その説明にもあるように「単なる報告ではなく、現場たる教会でのあれこれと突き合わせて その内容を吟味・検討することが期待」されていた。3名の牧師たちはその期待に真正面から応答して、与えられたテキストを読み通し、著者の主張とその要点を掴み、それに対して自らの感想と評価を記している。多忙な牧師の日常の中で、このために時間と労力を費やすことは容易であったはずはない。しかも、テキストは英語である。大きな挑戦であったことと思う。翻訳に勤しむ各氏の姿が目に浮かぶようである。特に永松両牧師は、共同作業でテキストの全訳を試み、成し遂げた。頭の下がる思いである。

 実際、各氏の教会における教会形成と牧会の忙しさはいかばかりであろうか。しかし、そのような現実に身を置きつつ テキストと向き合わざるを得なかったからこそ、「己の信仰の前提が言語化され、整理され」「自分が問われる」経験(永松九実子・永松博)を、また同じバプテストでありながら、神学の理解とアプローチのまったく異なる「バプテストの多様性」に目を開かれる経験(加山献)をしたと記している。そして、この経験は小さくなかったはずである。追われるような日常の中で、立ち止まって読み・考える。そこから、自らの牧会する教会が直面する課題を整理してみる。「読んで・考える」学びはこのようにして現場と結びついていることを、今回の2本のレビューから改めて確認した次第である。これら3名の牧師の労を感謝し、今後も学ぶことに貪欲であってほしいと願っている。願わくは、今後もこのようなブックレビューの寄稿が続くことを期待している。                         ©KANAMARU Eiko, 2019

"Eschatology" by Bill J. Leonard

加山 献(かやま・ささぐ)

*牧師、早良キリスト教会、日本バプテスト連盟

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%22Eschatology%22 by Bill J. Leonard(加山
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©KAYAMA Sasagu, 2019

*ブックレビューを読んで:金丸 英子(西南学院大学神学部教員)

 このクリティカル・ブックレビューは、バプテストフォーラムのスタディーグループへ任意で参加表明した投稿者によるものである。第1回目の今回は、7月27日現在で、永松九実子・永松博両牧師が "Revelation" を、加山献牧師が "Eschatology" をそれぞれ読み解き、概要をまとめて書評を寄稿された。一読して明らかなように、両方とも「労作」という言葉がぴったりする。そもそもこのブックレビューには、その説明にもあるように「単なる報告ではなく、現場たる教会でのあれこれと突き合わせて その内容を吟味・検討することが期待」されていた。3名の牧師たちはその期待に真正面から応答して、与えられたテキストを読み通し、著者の主張とその要点を掴み、それに対して自らの感想と評価を記している。多忙な牧師の日常の中で、このために時間と労力を費やすことは容易であったはずはない。しかも、テキストは英語である。大きな挑戦であったことと思う。翻訳に勤しむ各氏の姿が目に浮かぶようである。特に永松両牧師は、共同作業でテキストの全訳を試み、成し遂げた。頭の下がる思いである。

 実際、各氏の教会における教会形成と牧会の忙しさはいかばかりであろうか。しかし、そのような現実に身を置きつつ テキストと向き合わざるを得なかったからこそ、「己の信仰の前提が言語化され、整理され」「自分が問われる」経験(永松九実子・永松博)を、また同じバプテストでありながら、神学の理解とアプローチのまったく異なる「バプテストの多様性」に目を開かれる経験(加山献)をしたと記している。そして、この経験は小さくなかったはずである。追われるような日常の中で、立ち止まって読み・考える。そこから、自らの牧会する教会が直面する課題を整理してみる。「読んで・考える」学びはこのようにして現場と結びついていることを、今回の2本のレビューから改めて確認した次第である。これら3名の牧師の労を感謝し、今後も学ぶことに貪欲であってほしいと願っている。願わくは、今後もこのようなブックレビューの寄稿が続くことを期待している。                         ©KANAMARU Eiko, 2019